これだけは知っておきたい認知症ケアの基本

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認知症 ケア

認知症のケアにおいて大事なことといえば、何を思い浮かべますか? 要介護者とコミュニケーションを取る、積極的にリハビリをする……初めての認知症介護では、漠然とした答えしか浮かんでこないものです。

ここでは、「認知症ケアの際に知っておきたい基礎知識」と、「症状別に行ってほしいケア方法」、リハビリの効果を高めるだけでなく、あなたの負担を減らすためにも大切な「5大原則」をお伝えします。

介護生活の長い方も、「認知症介護がうまくいかない」と思う時は、焦る気持ちを落ち着けて「認知症ケアの基本」に立ち返ってみましょう。当たり前に行なってきたはずの初歩的な知識の中に、うまくケアするヒントが見つかるかもしれません。

目次

1、認知症のケアをする際に、知っておきたい3つのこと
1-1、認知症とは
1-2、認知症の患者との接し方
1-3、認知症に対してのリハビリの有効性
2、認知症の症状別ケア方法
2-1、中核症状
2-2、周辺症状
3、「5大原則」から読み解く認知症ケアのポイント
3-1、認知症介護に最も重要なのは「変えない」こと
3-2、より基本的な介護とは?
3-3、これ以上どう接していいかわからないと思った時は……
4、認知症ケアに活かせる資格
5、まとめ

1、認知症のケアをする際に、知っておきたい3つのこと

1-1、認知症とは

脳の病気である認知症にはいくつかの種類があり、その種別によって症状もさまざまです。まずは認知症の種類とその原因、主な症状について理解していきましょう。

    認知症の主な種類と原因

    • アルツハイマー型認知症
      認知症の60%をしめる型。加齢や遺伝、生活習慣病によって発症率が高まります。バランスの取れた食事や適度な運動など、生活習慣病の予防が認知症の予防にもつながるのです。
      【主な症状】物忘れから始まる記憶障害
    • 脳血管型認知症
      認知症の20%を占める型。脳の血管障害を患った後に起こる可能性がある認知症です。原因がはっきりしているため、脳血管型は認知症の中で唯一、「早期発見できれば治療が可能な認知症」とも言われています。
      脳卒中の術後は、術前の生活と変化がないかよく観察してください。違和感がある場合は、速やかにかかりつけ医へ相談をしましょう。
      【主な症状】無気力、自発性の低下、夜間の不眠や不穏など
    • レビー小体型認知症
      発症率はごく少数です。パーキンソン病の原因にもなる「レビー小体」というたんぱく質が脳に溜まることで、脳が萎縮するために起こると言われています。ただし、脳にレビー小体が溜まる原因はまだ解明されておらず、予防は難しいのが現状です。
      【主な症状】歩行障害や転倒、幻視、情緒不安定など
    • 前頭側頭型認知症
      発症率はごく少数。初老期に発症しやすく進行が緩やかなのが特徴で、原因はほとんど解明されていません。現在わかっているのは、ピック球と呼ばれる異常構造物が神経細胞に溜まったり、TDP-43というタンパク質が溜まったりすると前頭側頭型を発症する、というメカニズムのみ。
      原因が複数あることから、前頭側頭型の中でもいくつかの病気に分かれていると考えられています。
      【主な症状】人格が豹変する、清潔保持・衛生面が管理できない、暴言や暴力が増えるなど性格の変化

(※「認知症の中核症状と周辺症状(BPSD)の原因」)

1-2、認知症の方との接し方

最も大事なのは、「相手の尊厳を傷つけず、自分はここにいていいのだと思わせてあげること」です。下記の3つを意識して、認知症の方と接してみてください。

  • 簡単な頼み事をする
  • 一緒に何かを作り上げる/行動する
  • 相手の行動に対し、「ありがとう」「助かったよ」と少し大げさに褒める

認知症の方は、「人として必要とされること」に喜びを見出します。認知症の方にもできる簡単な頼み事をし、たとえきちんとできてなくても大げさに感謝を伝えましょう。満足感や達成感で心が満たされていくと、治療効果も高まります。

(※「認知症の人と関わる可能性がある人必見!接し方で大事な4つのこと」「認知症の人と関わる可能性がある人必見!接し方で大事な4つのこと」)

1-3、認知症に対してのリハビリの有効性

認知症のリハビリには、

  • 回想法
  • 行動療法
  • 音楽療法
  • 学習療法(脳トレ)
  •  レクレーション

など、グループホームやデイケアで取り入れられている、プロの目から見て効果的だと判断された、さまざまな手法・療法があります。リハビリは、「認知症が治る」「必ず改善する」ものではありません。しかし、「症状を進行させない」「進行を緩やかにする」ものとして一定の効果が得られることが、それぞれの介護現場で証明されています。

たくさんの方法があるリハビリの中で、

  • 回想法・・・「アルバムを見せる」など認知症本人の古き良き思い出を掘り起こし、記憶を司る脳を刺激する
  • 行動療法・・・「洗濯ものをたたむ」などの家事を認知症の方にも分担してもらい、「運動=体への刺激」「役に立った満足感=心の平穏」から脳を刺激する

は、家庭でもすぐに取り入れられるケア方法です。療法は要介護者一人で行わせるのではなく、どうすれば本人が楽しく役割を果たせるか考えながら「一緒に行動」してあげると、さらに治療の効果が得られます。ぜひ今日から生活に取り入れてみてください。

(※「認知症のリハビリ|専門施設で推奨!自宅で簡単にできる方法」)

2、認知症の症状別ケア方法

認知症の症状には、大きく分けて2つの症状があります。1つは、記憶障害、判断力の障害、失認や失行など、脳細胞が破壊される認知症には必ず起こる症状「中核症状」。もう1つは、徘徊や妄想、幻覚などを訴える「周辺症状」です。

ここでは、この2つの症状別に、主な症状の特徴と症状の進行を遅らせるのにも有効的なケア方法をお伝えします。

2-1、中核症状

「中核症状」の主な症状と適切な認知症ケアは下記の通りです。

主な症状と適切な認知症ケア

  • 記憶障害
    認知症の方が何度も同じ話をしても、「さっきも聞いた」と責めないであげましょう。物忘れを1つの「個性」として受け入れることが、記憶障害を進行させない秘訣です。治療は、回想法、音楽療法などの「記憶に訴える療法」と合わせた薬物療法が行なわれます。病院を訪れる際は、できるだけ要介護者の細かい症状(いつもと違う行動など)をメモし、主治医に相談を。
  • 判断力の障害
    判断力の低下する認知症は、頼み事をしても失敗が多くなっていきます。しかし、「失敗して危険だから、何も頼まない」と考えるのは、正しいケアではありません。失敗しないことを頼む、または失敗しないようサポートしてあげるのが、これ以上判断力を低下させないための正しいケアです。また、抽象的な質問を避けるのも判断力低下を防ぐのに有効的。例えば、「なぜそう思うの?」ではなく「○○と思ったんだね?」と具体的な質問をすると、考える力が働きやすくなります。
  • 失認や失行
    人の顔がわからなかったら「この人は隣の家の○○さんです」と説明し、わからないままにしないことが大切。ファスナーのある服の着方がわからなくなったら、ゴムの服を買ってくるなど、介護者が自分の力で行動しやすい環境を作ってあげてください。

「本人が安心できる方法」「本人が楽しめる方法」であるほど、症状進行を防ぐケアにつながっていきます。できるだけ認知症本人が笑顔になれる方法を一緒に選んであげましょう。

(※「これで正しく理解できる!認知症の中核症状と周辺症状の違いのすべて」)

2-2、周辺症状

「周辺症状」には、中核症状と本人が持ち合わせた性格や環境が影響します。

周辺症状のケアに大切なのは、まず「要介護者の行動に対して怒らないこと」。介護者にとってはどうしもストレスが溜まりやすい状況ですが、「なぜその行動を起こしたのか」を同じ目線で考え、気持ちに寄り添ってあげてください。

主な症状別と有効なケア方法

  • 徘徊
    徘徊には必ず「理由」があります。何故その場所に行きたいのかを尋ね、昼間なら一緒に出かけてあげましょう。夜中であれば、「明日の朝一緒に行きましょう」と言って出かけたい気持ちに共感し、共に行動してあげてください。
  • 物盗られ妄想
    「盗られた」と思う気持ちを否定せず、共感して一緒に探してあげてください。探し物をあなたが見つけたら、その場から動かさず、本人が見つけられるよう誘導しましょう。また、物がなくなりやすい環境の改善や、持ち物にわかりやすい目印をつけるのもお奨め。
  • 幻覚と錯覚
    「虫が壁を這っている」と言うなら「私が追い払うので別室で待っていて」と環境を変えて、幻覚を見た自分を忘れさせてあげてください。「子どもが走り回っている」と言うなら「誰もいない」と説明するのではなく、一緒に家中を回って誰もいないことを確認すると安心してくれます。

(※「認知症の周辺症状(BPSD)について知っておきたいこと」)

3、「5大原則」から読み解く認知症ケアのポイント

「5大原則」とは、「認知症介護をする上で絶対守ってほしい、要介護者を取り巻く環境づくり」のことです。

(1) これまでの生活環境や習慣、人間関係を変えない
(2) 個人的な思い出に浸れる生活空間を作る
(3) より基本的な介護を大切にする
(4) 達成感と満足感が得られる役割を与える
(5) 人づきあいを途切れさせない

リハビリを行っても効果が得られない、急激に症状が進行した、そんなときはこの5つの原則が守られていないかもしれません。これまでの介護を振り返り、理想的な環境に近づけるよう行動してみましょう。

3-1、認知症介護に最も重要なのは「変えない」こと

認知症ケアの第1原則は、要介護者の「生活環境を変えない」「生活習慣を変えない」「人間関係を変えない」こと。最近の記憶がなくなってしまう認知症の方は、いま起こっている環境の変化に大きなストレスを感じやすく、そのストレスが症状の悪化につながってしまうからです。

しかし、どんなに「生活環境を変えたくない」と思っても、引っ越しや入院、施設への入居など、介護を続けていくためにはやむを得ない選択もあるでしょう。その場合は、できる限り「生活習慣を変えない」努力が大切です。新しい環境の中でも、これまで日課にしていたものがあれば本人のしたいようにさせ、見守ってあげてください。

前の部屋と引っ越し先の部屋の雰囲気があまり変わらないように、家具などをできるだけ前と同じようにレイアウトするのも大切です。一見不用品に思える物でも、安易に捨ててはいけません。大切な品が身の回りにあれば、認知症の方は「ここが自分の居場所だ」と安心できるのです。

また、「人間関係を変えない」ことも、自分の居場所を確認させる大切なサイン。新しい人間関係は「閉じこもり症候群」など新しい症状の原因となり、認知症の進行や寝たきりになるのを早める可能性があります。昔から仲のいい友人や、以前住んでいた近所の方に新居へ遊びに来てもらい、人とつながっていることを感じてもらいましょう。

3-2、より基本的な介護とは?

介護の基本は、「食事」「排泄」「入浴」。この3つをいかに上手にケアしていくかが、徘徊や問題行動の防止につながっていきます。

  • より基本的な「食事」のケア
    認知症の方にもおいしいものを食べてもらうことが、食事ケアの基本。認知症の方はあまり表情を変えないため、何を出しても同じと思っている方もいるかもしれません。人間の五感(触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚)のうち、味覚と触覚は他の感覚が衰えても残り続けます。疲れているときにおいしいものを食べるとほっとするように、感情を表す方法がわからなくなっても、おいしいものを食べると安心するのです。
  • より基本的な「排泄」のケア
    「トイレに行きたい」と思うのは、脊髄から大脳に排泄するよう指令が出されるからであり、認知症だからといってこの伝達がされなくなることはありません。では、なぜ認知症の方は排泄を失敗してしまうのか。それには別の理由があります。

【感覚の識別ができない】
脳に感覚が伝わっても、それが尿意や便意だと識別できない。「何かしなければいけない」と切迫感だけを感じるため、不安でウロウロしているうちに排泄してしまう。

【尿意や便意は識別できるが、その後どうしていいのかわからない】
「トイレに行って用をたす」という行動そのものを忘れてしまっているため、焦っているうちにその場での排泄に至ってしまう。

【尿意や便意を感じたら排泄することは知っていても、トイレの場所がわからない】
トイレを探しているうちに、我慢の限界を超えてしまう。

これらの理由を踏まえた上で、「排泄が失敗してしまった理由」をあなたが分析してあげましょう。そして、尿意や便意のサインを本人の代わりに察知し、トイレに誘導してあげるケアが大切です。

排泄のケアは、「トイレに通うこと」が重要です。簡易おむつを使うと、「尿意や便意=排泄しなければいけない=トイレに行く」という、当たり前の感覚を忘れさせてしまいます。また、排泄の失敗を防ぐために、次の3つを意識してケアしていきましょう。

  • 食事中や外出中でも、できる限り迅速に対応し、排泄最優先の生活を送る
  •  朝食後は、トイレの便座に座ることを日課にする
  • 排便の基本姿勢「便座に座り、やや前屈みになる姿勢」を癖づける
  • より基本的な「入浴」のケア
    家庭用の小さな浴槽こそが、認知症の方にとって一番安心できるお風呂です。施設などにある機械式のお風呂は、要介護者には異質な物に見えます。今、介護を必要としている高齢者にとって一番なじみがあるのは、洋式のハイテクなお風呂ではなく、和式の何の変哲もないお風呂です。

介護のためにお風呂のリフォームを考えている人は、普通の浴槽にちょっとした工夫をしましょう。介助が困難で、事故につながる恐れもある浴槽の高さを変えればいいのです。具体的には、深さ60cmの湯船を20cm床下に埋め込み、40cmの高さの洗い台かイスを隣接させる。そして、本人の力で一度その台やいすに座ってから、湯船へ出入りしてもらいましょう。

水の浮力を生かせば、足腰の弱った高齢者でも、湯船から自力で出やすくなります。自力で出ようとする力が働けば、介助もしやすいもの。こうした、別の原理を利用した介助を覚えていくと、介護はもっとしやすくなります。

3-3、これ以上どう接していいかわからないと思ったときは……

人を頼りましょう。

あなたがいま、どうやってもうまくケアができないのであれば、それはあなたが悪いからではありません。認知症の方にとって家族は特別です。誰よりも心を許している相手だからこそ、介護されている後ろめたさが「家族への攻撃」として行動に出てしまうのです。

認知症の方は「子供から頼られていた親としての自分」と「親に甘えていた子供の頃の自分」に戻りたがっています。しかし、そのどちらも、大人になった自分の子供には求められない、求めてはいけないと感じるのでしょう。

また、認知症のケアに「受容」と「共感」は大切ですが、長く続けるためには「相性」も重要です。あなたといるより笑顔が多いと感じる方がいるなら、その方にお任せすることも、症状の進行を抑える手段のひとつといえます。

4、認知症ケアに活かせる資格

国家試験である介護福祉士の他、“いま、認知症ケアの知識と技術が必要”な方に向けて、社会人や主婦でも受験できる認知症ケアの資格を知っていますか? それは「認知症ケア専門士」「認知症ライフパートナー」「認知症ケア指導管理士」という3種類の民間資格です。

仕事に必要とされる資格としては弱いですが、認知症への正しい理解や知識、接し方などの技術を学ぶものとしては大きな力となるでしょう。詳しい受験内容と、それぞれの試験のメリット・デメリットは、「認知症に関する資格一覧と資格取得メリットについて(https://careerlove.jp/dementia-qualification-585)」をご覧ください。

この他、今すぐ認知症の知識を手にするために便利なのが、「認知症サポーター養成講座」。これは、日本の全国民が認知症になっても安心して暮らせる町になることを目指し、行政が推進している取り組みです。

DVD観賞とテキストを用いた講座に半日参加すると、認知症サポーターになった証しとして、オレンジ色のブレスレット「オレンジリング」が後日配送されます。資格ではありませんが、“まず認知症について知る”には良いきっかけになるはずです。

【資格試験に関する問い合わせ先】

(※「認知症に関する資格一覧と資格取得メリットについて」)

5、まとめ

治療法はないとされる認知症ですが、世の中には病気と上手に付き合っていくためのケア方法がたくさん用意されています。その中で、できるだけリハビリにも有効な手段を使いたい、簡単な手法を教えてほしい、と思うのは当然の話です。

しかし、どんなに画期的といわれる手法より、認知症に一番必要なケアは「大切な家族を守りたい」と思うその心。ケアに疲れてしまったとき、「認知症の方をなんとかしてあげたい」とこの記事に辿り着いた今の気持ちをどうか忘れないでください。

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